自分/自社に対する誹謗中傷を見つけたら、まずやるべきことは、証拠を保全することです。
ネット上の情報は、簡単にアップロードできる反面、簡単に削除できます。証拠を保全する前に行動を起こしてしまうと、問題の文章が削除されたり、修正されてしまう可能性があります。それで満足できるならばそれでも良いのですが、その場合、発信者情報の開示請求や、損害賠償請求を行うことが困難となります。
また、弁護士に相談するにしても、誹謗中傷文言を含む投稿等を印刷して持参した方が、相談がより短時間で終了する可能性が高まります。
ネット上での誹謗中傷についての証拠保全の方法は、大きく2つに別れます。
1つは、ブラウザ等に表示された画面を印刷するというものです。紙に印刷するか、pdfファイルとして書き出すかはともかく、スクロール先を含めて全体を物に固定することを目指します。
もう一つは、ブラウザ等に表示された画面のスクリーンショットを取るというものです。別途デジカメ等を使って画面を撮影するという方法も有り得ます。
どちらの方法も一長一短があるので、その時々に応じて使い分けるしかありません。
例えば、電子掲示板上に誹謗中傷が書き込まれている時、画面をスクロールさせながらその都度スクリーンショットを取るというのは困難です。スレッド内のごく一部の投稿にのみ誹謗中傷文言が書かれているにすぎない場合はその投稿を含む画面のみスクリーンショットを取るという手はありますが、スレッド全体に誹謗中傷文言が散在している場合、そのスレッド全体を印刷して証拠保全を図るのが合理的です。
他方、ウェブページによっては、印刷コマンドを受け付けないものもあります。その場合、スクリーンショット等で対処するよりありません。
このようにして証拠保全を図る際の注意をいくつか指摘します。
1つは、かならずURLと時間が記録されるようにするということです。ブラウザの画面を印刷する(pdf化する)場合、プリント時のヘッダやフッタにUELと印刷日時が記録されるように、予め設定しておくということです。
スクリーンショット等の場合も、かならずURLが残るように、記録する範囲を設定することが必要です。
もう一つは、SNSの場合、その誹謗中傷発言に至る流れがわかるように記録を取るということです。電子掲示板には「スレッド」という概念がありますが、Twitterには必ずしもそういう概念はありません。しかし、Twitter上の発言の多くは、発言者自身または第三者のそれまでのtweetの蓄積を前提になされています。このため、問題のtweetの前提となるtweetについても証拠保全をしておかないと、あとで、「何故このtweetが名誉毀損にあたるのか」が判然としなくなってしまいます。
YouTube等の動画で中傷されているときは、まずブラウザで再生した上でURLが分かるような形で動画撮影した上で、動画ダウンロードツールを使ってデータ自体を保存するのがベストです(この場合、私的使用目的のダウンロードではなく、裁判における資料を収集するためのダウンロードですから、ダウンロード違法化の対象外ですし。)。
ブラウザの保存コマンドを利用してHTMLデータ自体を保存するというのは、タグ等を保全する必要がある特別な場合を除いては、あまり意味がないように思います。結局のところ、どういう形で公衆に示されていたのかが重要だからです。